氷中花
12


靴擦れしたのか足が痛くて、見るとストッキングの中に血が滲んでいた。
そのまま乾くと悲惨な事になるのは目に見えていたので、
迷った末ストッキングを脱ぐ事にした。
各務は心ここにあらずといった風情で窓の外を見ているようだったものの、
一応年頃の娘らしく唯はソファの裏側にしゃがみこんでストッキングを脱いだ。

「痛っ」

血の出たところはやはり少し乾いてかさぶたになっていたようだ。
脱ぐ事でストッキングに張り付いた部分が剥がれてまた血が滲んだ。

ふいに視界が薄暗くなって目を上げる。
背後から各務が唯を覗き込んでいた。

「見せてみろ」
「や・・・」

各務は唯を強引に抱え上げると、ソファに座らせ跪いた。
素足になった唯の右足を自分の目の高さまで持ち上げる。
唯は混乱と羞恥のため頬を染めた。

「いっ」

痛いという言葉を飲み込んで唯は呆然とする。
各務の舌が唯の傷口をそっと舐めていた。
そろり、と触れる舌の感触に唯はぞくぞくと震えが来るのを止められなかった。
痛みの中の甘さは各務との夜を思い起こさせた。
あのときのキスはあんなに冷たかったのに、あなたの舌は熱い。
唯は身体の奥に熱いものを感じてしまう自分が理解できなかった。

目を閉じていた各務がふと視線を上げ、唯と目が合った。
唯は自分の胸のうちを知られたような気がして真っ赤になってしまう。

「消毒だけじゃ足りないか」

各務はくすりと笑うと足首の傷口に触れていた舌をそのまま上にずらしていく。

「え・・・」

ふくらはぎから腿に辿る舌に唯はぞくぞくと震えた。

(やだ・・どうして、私こんな風に)

ドレスのスカートをふわりと持ち上げながら各務は舌をその奥に進めた。

「やめて・・くださ・・あっ」

各務の舌が唯の下着の溝に触れた。
ドレス同様下着も店員が用意してくれたものだった。
シルク素材で前はフルレース、後ろはTバックになっていた。
ドレスに余計なラインを出さないためと説明されてあきらめて穿いたが、
今はそのことを後悔していた。

「これも、よく似合ってる」

各務はそう言って人差し指で下着をなぞった。
その指一本で唯の熱をさらに高ぶらせる事に気づいているのか。
今の唯には各務の顔を見る余裕はない。
唯は下着の中の状態を知られたくなくて身を捩るが、
各務の左手に腰を抱かれていたためうまく逃れる事ができなかった。

「あん・・・はぁ・・」

漏れる声を聞かれたくなくて、自分の両手で口を塞いだ。
各務の舌の感触は今までに感じたことのない種類のもので、
唯はそのねっとりした感触に我を忘れそうで怖くなった。





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